偶成和音をジャズから学ぶアプローチ

BGMで色々作りたい方やボーカル曲で幅広いアレンジを目標とする方にとっての基礎的な内容の習得として今まであまりブログにジャズボイシングのアプローチのことを書かなかったので、少し所見を述べてみたいと思います。

和声学の偶成和音のジャズ版ように私が勝手に感じているジャズボイシングのアプローチですが、クラシックの作曲において偶成和音がいまいち上手く習得出来てない、あるいはよくわからないという方はジャズのアプローチを勉強するとヒントになるかもしれません。

シューマン 子供の情景よりトロイメライ(5小節目から)

まず偶成和音とは何?という方は上の譜例を見て下さい。(動画は18秒あたりから)

有名なシューマンのトロイメライですが、3小節目のFmの部分がいわゆる偶成和音です。これはアルトに相当するパートの半音階的な経過音によって偶然発生している和音であり、ノンダイアトニックコードですが、こういった和音が挟まることによって調的な広がりや響きの豊かさを得ることが出来ます。

和声学の本にも偶成和音については書かれていますし、実際のクラシックの作品において偶成和音の譜例には枚挙に暇がないのでわざわざ説明の必要はないかと思いますが、言葉のみで簡単に説明すると「コードトーンや経過音などの非和声音が集まり、カデンツに矛盾して成立している和音」のことを指します。

実際は偶然そうなっているというわけではなく、意図的に豊かな響きを求めて行うもので、作曲家ごとに使い方に個性があったりします。

フォーレっぽい偶成の用法

例えば先日の記事でフォーレの弦楽四重奏を軽くアナリーゼしてみましたが、フォーレなら偶成の借り元を同主短調や準固有和音調(同主短調のダイアトニックコードを主和音とする調)に求める傾向があり(すべてがそうという意味ではありません)、色んな作曲家の曲を分析・解析するうちに傾向予測が出来るようになります。

 

上の譜例ならソプラノの最初のシと最後のソに対してEm→Gという和声付けがされています。ソプラノはシ→シ♭→ラ→ソという風に一部クロマチックオルタレーションを含み、シ♭に対してE♭という偶成和音を当てていますが、この和音は同主短調の♭Ⅲを借りてきているわけで、フォーレが好んで用いるパターンの一つです。

こういったことを言い出したら、また記事が長くなってしまうのでこれだけにしたいのですが、色んな作曲家の偶成の使い方には個性があり、時代によっても違います。既に自分なりのお気に入りの偶成和音の使い方を確立している作曲家の方もたくさんいらっしゃると思います。

 

なかなか素敵な偶成和音なのですが、レッスンで和声をやらせて頂いている中でどうにも感覚が掴みにくいという方が多く、独学でやってらっしゃる方にも偶成和音の意味はわかるけれど、いまいち実際に自分が使う上では上手く活用出来ていないという方のために、ちょっと趣向を変えてジャズのアプローチを勉強してみると良いかも?と思いました。

 

クロマチックアプローチ、ドミナントアプローチ、ディミニッシュアプローチ、etc…など色々あり、バップ期までのジャズよりも近年はもっと発展的なアプローチの用法もあって、ある意味偶成和音に近しい考え方をしています。

 

例えばコードがFの時にドソラというメロディーがあったとします。これにFコードに合わせてハモリを付けると次の譜例のようになります。

 

特に難しいことはなく、Fコードの下にFM7のファラドミの音を下に足しているだけでいわゆるハモリと言い換えても良いかもしれません。響きとしてはトップにある2つ目の「ソ」を除けば完全にFM7の範疇なのでよく言えばコード通りの協和度の高い和声付け、悪く言えば変化のないつまらない和声付けです。

これにジャズでいうところの「ディミニッシュアプローチ」を行ってみましょう。

真ん中のトップが「ソ」の下にB♭dimコードが割り当てられてちょっと響きが豊かになっています。このレ♭は何処から来たのか?というとC7の♭9thなわけですが、ノンダイアトニックの音が鳴ることで色彩的にも豊かになりますし、出鱈目な響きではなくちゃんと4和音の形態を取っていますので美しく響きます。

鍵盤で弾いてみるとFM7だけで和声付けするよりも別の可能性や広がりがあるわけですが、これはある意味においてクラシックの偶成和音である倚和音とよく似ています。似ているというか、倚和音そのものです。

偶成和音とジャズのアプローチの違いは偶成和音は一切の制限がなく、ジャズのアプローチは一応は種類が限定されていることでしょうか。

用法としてはクラシックの方が自由であり何をやってもいいので面白い響きが作れますし、方向性を決めればそれがフォーレのように自分の個性にも繋がってきます。

何でもアリと言われてしまうと逆に困ってしまう方もいるわけで、ジャズのアプローチのようにある程度限定された内容から取っ掛かりを得てみるのもありかもしれません。

ジャズのアプローチ=クラシックの偶成和音ではないので、あくまで違う角度からの勉強方法のお勧めという意味であり、結局はたくさん色んな作曲家の作品を聴くのが一番かと思いますが(後期ロマンや近代フランスは特に面白いです)、これを勉強しておけばジャズを作曲するときに多いに役に立ちますし、ビッグバンドはこれを理解していないと書くことが出来ないため、ジャズも作りたいという方は手を出してみると良いかもしれません。

お読み頂き有り難う御座いました。

 



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ラヴェル「弦楽四重奏」4楽章アナリーゼ

ラヴェルの弦楽四重奏は近代フランス音楽における屈指の名作ですが、聴いていて面白い、アイデアに富んだ箇所がたくさんあります。

4楽章の和声主体ではなくて、旋律主体で和声がそれに追従するようなフレーズが面白いので今回はその部分に焦点を当てて取り上げてみたいと思います。


動画の23:47秒から。

 

まず冒頭はドミナントの和音で始まります。ラシ♭ソソ#ラという5/8拍子の主要音型がいきりないffで始まりますが、伴奏はなくオクターブユニゾンの単旋律です。

2小節目のA7(♭9,♭13)で一旦和音に解決しますが、♭9thと♭13thの間に音を置かなかったり、トライトーンを強調したりとdu talon(弓の根元で)も相まってかなりエグイ響きを意図的に狙っているようなボイシングです。4小節目はⅤ9の下方変位和音で、短調におけるⅤ9の下方変位の根省というよりは「裏コード」といった方が多分多くの方に通じると思うので、=E♭7と緑で書き加えました。

この4小節だけでも多くのオルタードテンションが登場していますが、ジャズのようにテンションが多いラヴェルやドビュッシーの音楽は日本の和声学の和音記号で書くよりも、むしろコードネームを付けてポピュラーのディグリーで書いたほうが楽な場合が多々あります。

和音記号は古典和声で出来たバロック、古典、初期のロマンあたりまでをアナリーゼするには適切ですが、それ以後の音楽には不便な点がたくさんあり、この辺りが私がクラシックの曲でもアナリーゼでポピュラー理論で行う理由です。

双方にメリットとデメリットがありますが、概ねポピュラーの方が対応出来る幅が広く、分かりやすいと感じています。

冒頭は旋律と伴奏のようなスタイルではなく、基本的に単旋律で出来上がっている楽曲構造です。

次にラシ♭ソソ#ラというフレーズに伴奏的な3和音の和声が付きます。とても単純でA→G→Fという和音ですが、AはⅤ7→Gはメロマイから借用のⅣ(ドリアのⅣ)、♭Ⅲはダイアトニックなので和声だけ見るとちょっとメロマイっぽい感じになります。

そもそも♭1つのニ短調で書かれていますが、ここまで一度も主和音であるDmは登場しておらず、どちらかというと旋法っぽい印象を受けます(フランス風に書くならsolの旋法、ミクソ系の旋法)。

ラヴェルにはこういった旋法的なフレーズはかなりあり、ドビュッシーよりも多いように感じています。

面白いのが小節構造で、冒頭部分が2+2+3で7小節、次にA→G→Fとバスが下行する部分で3小節+3小節+5小節というかなり変則的であえて偶数小節を出さずに奇異な印象を与えようとしている感じです。

拍子の5/8という変則的な拍子に加え、奇数を重視した変則的な小節構造は聞き手に意外な印象を与えます。

この部分はなんとなく旋律と伴奏という感じです。

スコアマークAから旋律に追従した和声が生まれます。主旋律のラシ♭ソソ#ラの下に2ndヴァイオリンが固定長3度(M3)でハモリを付けます。これはある種の平行和音ともとれます。

その後半音階で主旋律が上行していきますが、2ndヴァイオリンは常に1stヴァイオリンに対して長3度のハモリを維持しています。

ヴィオラはレド#ドシという風に半音階で下行していて音型に規則性はありますが、音程まで平行和音というわけではありません。一応コードネームを付けてみましたが、こういう平行和音的なフレーズや半音階ではコードネームからの分析はあまり意味のない行為になります。

 

和声が主体で旋律が生まれているというよりは、旋律が主体で和声が生まれています。

半音階の上行の末に今度は主題が短6度上に移調され、チェロが加わった似たようなフレーズになります。

トップ(1st)とバス(cello)の関係はニ短調の時と同じですが、最初だけ変ロ短調の主和音を鳴らした後は内声が短6度(m6)の固定ハモリで半音下行していきます。最初だけなんとなく調性があり、すぐに崩れていく感じでしょうか。

それを2回繰り返した後は今度はF#7コードに落ち着いて、トップを主題の変奏、内声やバスは半音階や音階下行(F#ミクソ♭6)を反復してスコアマークBに進みます。

どういう作られ方をしているのか?つまり細かい部分をしつこく考えずに、ラヴェルの大雑把なコンセプトを自分なりにまとめてみるのも良いかもしれません。

それは古典和声的な内容ではありませんが、コンセプトさえわかってしまえば、筋の通った内容であることがわかるはずです。

コードネームだけを見てもあまり調的な、または和声的な分析が役に立たず、あくまで旋律が主体でそれに平行和音や半音階で和声が添え物として付けられているので、普通の和声分析(コード分析)が通用しにくい内容になっています。

ドビュッシーにもこういうスタイルはありますし、近代音楽ではそれほど珍しいスタイルではないのですが、明らかに旋律が主体になっており、先に和声があって和声に準じて旋律が作られているような内容ではありません。

ポピュラーでよくあるようにKEY-CでCーAmーDmーGやFーGーEmーAmのように先にコード進行(和声進行)を考えて、それに沿って旋律を付けるという方法やそうやって出来た曲をアナリーゼする方法ではこういった感じの曲のアナリーゼが出来ないため、ポピュラーのみの曲に慣れている方だと「??」となってしまうかもしれません。

BGMを作る時にもこういった手法を知っておくと自分の技術のバリエーションが広がります。スコアを見ていけばラヴェルにはラヴェルなりの考えがあることがわかりますし、それを言葉で説明出来るレベルで理解出来るようになれば真似て作ることも出来ます。時には自分の作品のコンセプトに取り入れることすら可能です。

 

作曲は一人で黙々と作ることも大切ですが、色々な作曲家の色々な作品に(出来れば高度で洗練されたもの)触れることで考え方や視野は広がっていきますので、時に作曲の手を止めて、他人の曲に目を向けるのもあながち無意味ではありません。作曲において自分にはない考え方やアプローチを知ることが出来るだけでも意義はあると言えるでしょう。

この楽章すべてがこのように出来ているわけではなく、こういう箇所もありますよ、という程度なのですが、普段は和声主体の曲のアナリーゼばかり取り上げているような気がしましたのでたまには違った角度からのアナリーゼの記事にしてみました。

お読み下さり有り難う御座いました。

 



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フォーレ「弦楽四重奏」のアナリーゼ

今ちょうど作曲レッスンでも取り上げていますが、なかなか面白いので趣味でフォーレの弦楽四重奏のアナリーゼをしています。

フォーレは時代的にロマン派音楽からドビュッシーやラヴェルへの中間に位置する作曲家で、音楽的特徴はかなり幅広いですが、概ね両者の中間的な技法を使っています。

フォーレは初期から晩年に掛けてかなり作風が違うので、一概にこれがフォーレだと断定的物言いはしにくいのですが、中期から晩年に掛けてはドビュッシーやラヴェルに続くような和声の拡大が見られ、これがなかなか面白いというか興味深いので、最近は好んで目を通している感じです。

弦楽四重奏は老人となったフォーレの最後の作品であり、華やかさみたいな印象はなく、書法は極めて対位法的であり、また簡素で、同時にある種発展的でもありますが、フォーレの和声法の特徴だけでなく、フォーレの対位法の特徴も顕著に顕れているため勉強にお勧め出来ます。

フォーレの和声的な特徴を言葉で羅列すると実にたくさんあるのですが、フォーレの弦楽四重奏からいくつか抜粋してご紹介したいと思います。

和声法 : 基礎理論 大作曲家の和声様式
イヴォンヌ・デポルト, アラン・ベルノー著 ; 永冨正之, 永冨和子訳
日仏音楽出版

独学で学ばれる方は実際の作品のアナリーゼも役に立ちますが、先に上の「和声法 : 基礎理論 大作曲家の和声様式」のフォーレの項目に目を通しておくと、変則的な特徴が理解しやすいのでお勧めです。

 

お馴染みのフォーレ終止

弦楽四重奏 第一楽章 29小節目

上の楽譜の♭Ⅲという進行はよく和声の本などで紹介されているフォーレ終止の類になります(ディグリーはポピュラー表記です)。

ホ短調ではⅣ度の和音はAmですが、メロディックマイナーのⅣ度を活用してAになっています。♭Ⅲという進行をフォーレ終止と呼ぶことが多いようですが、このⅣ(和声では+Ⅳで【ドリアのⅣ】と呼びます)がポイントで、私はⅣがドミナント化されたり、付加6化されても、♭Ⅲ→Ⅳ→Ⅴという進行でドリアのⅣが使われているのであれば、どんな転回形であれ、まとめてフォーレ終止と呼んでいます(厳密にはちょっと違うようですが)。これに類する終止はフォーレの曲にたくさん登場し、フォーレの個性の一つとなっています。

フォーレはメロディックマイナーのⅣ度を用いることを好んでおり、あらゆる箇所で、あらゆる形で多用されています。

 

同主短調の借用を好む

弦楽四重奏 第一楽章 43小節目

フォーレにはかなり同主短調の調域への偏愛が見られます。

ポピュラー理論ではSDM(サブドミナントマイナー)と言って、同主短調のサブドミナント機能の和音を借りてくるテクニックがありますが、フォーレはサブドミナントに限定せずに同主短調の和音をなんでも借りてきます(特に♭Ⅶは好きなようです)。

上の譜例のGB♭F7GM7FDmという進行で、F7(♭Ⅶ)はポピュラー理論の範疇で説明出来ますが、DmⅤm)とB♭♭Ⅲ)は説明が出来ません。

KEY-GではDmⅤm)とB♭♭Ⅲ)はノンダアトニックコードですが、KEY-Gmと考えると両方ともダイアトニックコードとなり、機能分類だと♭Ⅲはトニック、Ⅴmはドミナントになります。

つまり同主短調からサブドミナントだけでなく、トニックもドミナントも借用していることがわかります。そのKEY-Gmの和音が出てくる部分だけを部分転調と考えては駄目なのか?と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、たった1小節の和音1つか2つの短いスパンなので、これは所属転換して考えるのか一般的だと思われます。

 

このテクニックにポピュラー風に名前を付けるなら、マイナーキーのサブドミナントを借りてくることを「サブドミナントマイナー」と呼ぶなら、トニックマイナー?やドミナントマイナー?と呼んでも良いかもしれません。

実際にはⅤmは和声学ではエオリアの7と呼びますのでドミナントマイナーとは誰も言いませんし、3種のマイナーのトニックのことをポピュラー理論でトニックマイナーと呼びますので紛らわしい表現ですが、ポピュラー理論に親しんでいる方にイメージとしてわかりやすい表現ではないかと思います。

 

♭Ⅲの借用には特に名称がないのですが、フォーレは好んで長調のときに♭Ⅲ度の和音を借用和音や偶成和音として用いています(特に偶成では結構多い)。

前述の通りフォーレはポピュラーでいうところのSDMだけでなく、同主短調の和音なら何でも借りてくるのですが、さらに加えてハーモニックマイナーやメロディックマイナーからの借用も数としては少ないものの稀に見受けられます。

これはドビュッシーやラヴェルも受け継いでいる和声法ですが、時代の流れがわかって面白いです。

43小節目のこの部分はKEY-GとKEY-Gmを行ったりきたりしている感じでVn1の主旋律だけを歌えば、マイナーキーですが、内声やバスにシの♮が何度も出てくるので、なんとも不思議な感じがします。

 

ナポリを好み、その用法もかなり自由

弦楽四重奏 第一楽章 6小節目

古典和声においてはナポリは別名ナポリの6とも呼ばれ、第一転回形で使われることが多く、またナポリはⅡの代理なので進行先はⅤ度であることがほとんどです。

しかしフォーレはナポリの和音を4和音の♭ⅡM7で使ったり、ナポリの後の進行先に制限はありません。♭Ⅱ→♭Ⅲや♭Ⅱ→Ⅰや♭Ⅱ→Ⅳなどナポリの和音をほとんどダイアトニックコード同様に扱っています。

フォーレのナポリの用法はポピュラーよりもさらに自由だと言っても良いかもしれません。

一般的には主要和音→代理和音や借用和音という流れが普通なのですが、フォーレはナポリの和音の後に主要和音を持ってきたり、代理和音の後に主要和音に進んだりかなり自由な和声進行を用いています。

 

augコードの愛用

弦楽四重奏 第一楽章 19小節目

フォーレはしばしば調性を不明瞭にするためにaugコードを用います。大抵はその調のⅠかⅤですが、増和音化されることで古典和声の響きとは一線を画した不思議な響きが顕れます。

Ⅴの増和音は古典和声にも登場するⅤの上方変位ですが、Ⅰの増和音、つまりⅠaugやⅠaugM7の出所は思うに平行調のハーモニックマイナーかメロディックマイナーの♭Ⅲaugと思われますので、やはり短調からの借用ということになります。

フォーレの和声拡大の技法はいくつかありますが、短調の方面へのアプローチから発生しているものが多く見受けられます。

Ⅴが上方変位するのは古典和声でも普通にありますが、フォーレの場合はもっと大胆に増和音をまるでダイアトニックコードのように使うことがしばしばあります。

 

フォーレの特徴的な転調(シャラン的転調)

弦楽四重奏 第一楽章 97小節目

シャラン和声によく登場する特徴的な転調方法の1つとして、離脱和音と転入和音の2つの和音間に共通する音を軸にして遠隔調へ一気に転調するという手法があります。

近親調へ進むときもこれは行われますが、遠隔調へひとっ飛びに進むとかなり目立つ特徴的なパターンなので私は勝手に前に書いた作曲基礎理論の本でシャラン的転調と呼んでいます。

正式名称は特にないと思いますが、シャラン和声によく登場するこの手法は元はフォーレがよく用いたもので、フォーレの曲にたくさん登場します。フォーレがよく使うのでフォーレ的転調と呼ぶべきなのかもしれませんが、フォーレは和声の本を書かず、シャランが著したいわゆる和声課題集によく登場することから便宜上シャラン的転調と呼んでいます。

この部分では♭4のFマイナキーから#4つのEメジャーキーへ調号8つ分一気に遠隔調へ転調していますが、この時軸になっているのは離脱和音のBbmのラ♭と転入和音のAM7のソ#であり、このラ♭=ソ#がタイで繋がれて2つの遠隔調を結んでいます。

こういったか細い糸で結ばれた遠隔調への転調はかなり耳に残り、印象的な方法と言えます。

 

実はまだまだ書き切れないくらいたくさんあり、紹介しきれません。ブログの僅かな記事でフォーレの特徴を明確に示すのは到底無理なので、やはり自分でたくさんフォーレの作品に取り組まないと本当のところは分かってこないと思います。

とりあえずレッスンでやっているだけでもこの10倍くらい書くことがあります。ほかにもフォーレには名曲がたくさんあり、BGM製作でも自分の曲でも応用出来そうな技術がたくさんあるので、ほかの曲もしっかりと取り組んでみる予定です。

独学で学ばれる方はフォーレに限った話ではありませんが、特徴的な和声やフレーズを見つけたら、その部分の特徴を文章でまとめて、自分でも真似て似たようなフレーズを作って、さらに移調して何パターンか作ってみると段々と自分の引き出しが増えていきます。

少なくとも単なる技術習得としては有益ですし、気に入ったものはそこからさらにアレンジを加えて、自分の技術としてしまっても良いかもしれません。過去の大家の作品を見ていると勉強になることが多いので、アナリーゼは作曲をやっている方にお勧めできる勉強方法です。

 

お読み頂き有り難う御座いました。

 



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移調楽器を実音で書く人たち

木管楽器と金管楽器の移調楽器はそれぞれ成り立ちが異なり、なぜ移調楽器が存在し、どうして移調楽器用の譜面が必要なのかは多くの方がご存じだと思いますが、普通オーケストラスコアを見るとクラリネット、ホルン、コールアングレ、トランペット、サクソフォン、etc…は移調譜で書かれています。

移調譜面は(特に木管がそうですが)、基本的に演奏者側の都合で存在するものだと個人的には思っていますし、移調で書いてある譜面を読むのが普通だとも思っていますが、あまりにもややこしい譜面になってくると脳内移調が面倒臭くなることもあります。

01

上の譜面はサクソフォン四重奏ですが、コードネームで表すとなんというコードネームになるでしょうか?ソプラノサックスはBb管なので長2度下、アルトサックスはE♭管なので短6度下、テノールサックスはBb管なので長2度下+1オクターブ下、バリトンサックスはE♭管なので短6度下+1オクターブ下です。下に答えがありますが、出来れば自分で楽譜を読んでみて下さい。

サクソフォンについて

これにサックスやクラリネットなど普段から演奏者側で移調楽器に慣れ親しんでいる方以外で、即答出来る方は相当譜面に強い方だと思います。

これを大譜表に直すと下の譜例になります。

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正解はFM7ですが、実際のサクソフォン四重奏はかなり複雑なので譜面を読むのはそれなりに大変です。

サクソフォン四重奏は実音が一つもないので常に脳内移調で読み進めていきますが、オーケストラスコアでも似たような箇所はたくさんあり、A管のクラリネットとコールアングレとテノールで書かれたバスーンと調号のないホルンのような譜面はト音とヘ音の実音が一つもないので、同じように大変です。

 

01

ト音とヘ音の実音が一つもないケース(バスーンは途中からヘ音)

しかしこれは「慣れ」の問題であり、訓練次第で段々と速くなってきます。レッスンでも移調譜面が苦手という方はいらっしゃいますが、ト音やヘ音が読めるようになったのなら、同じ理屈で移調譜面やアルトやテノールやソプラノ記号も読めるようになりますし、移調も慣れていきます。

 

打ち込みだけで音楽をやっていて、市販のオケ譜面などを一切読まない人にとっては移調楽器は全く関係ないですし、それどころかト音とヘ音さえ読めればアルトやテノールやソプラノ記号すら読む必要はありません。もっと言うならピアノロール主体で作業する人もいるわけで譜面そのものと付き合う必要が全くない方もいると思います。

しかしアレンジの仕事で誰かに演奏してもらう場合にはこういったことは必要になりますし、市販のスコアのほとんどは移調楽器はそのまま移調譜面で書かれていますので、やはり無視することは出来ないのが現状です。

 

とはいえ、面倒と言えば実際に面倒ではあるのですが、むかし千住明のピアノ協奏曲「宿命」というテレビドラマのスコアに手書きのオケ譜面が掲載されていて、作曲家がオケ譜を書くときはすべて実音で書いてありました。

私たちもホルンやクラリネットをDTMでDAWに打ち込む時にB管やF管として打ち込む人はおそらくいない?と思いますが、千住明のような立派な人でも移調譜面は演奏者側の問題であり、作曲の段階では無視しているのがわかり安心?した記憶があります。

 

手書きの譜面の段階で移調譜面で書く人が、果たしてプロの作曲家でどれくらいいるのか私はよく知りませんが、少なくとも出版される段階ではほぼ100%移調されて出版されるのが普通です。楽譜は演奏するために出版されるのですから、移調楽器のパートがすべて実音で書かれていたらクラリネットやホルンの人たちは困るのではないかと思います。

しかしプロコフィエフのようにオケ譜を実音で書いたものもあり、近年でもどうも現場によって色々な考えがあるようです。

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ピアノ協奏曲2番 第4楽章

ベートーヴェンだとかブラームスだとかドビュッシーの譜面は移調譜があるのが当然ですが、プロコフィエフの譜面を見ているとホルンやトランペットやクラリネットパートに違和感を感じて、読み始めるとたまに「??、、、、あぁー実音か…」となるときがあります。特にホルンが実音で書いてあるのが未だに不思議に感じます。

移調楽器に限らず対位法でもソプラノ、アルト、テノール、バスの記号を別々に使うので、慣れないうちは誰でも大変ですが、トータルで見ればあらゆる譜面に対応出来た方が絶対的に有利です。

どんな練習方法がありますか?と問われることがありますが、移調譜として書かれていない普通の簡単な譜面でも移調譜面やト音とヘ音記号以外の音部記号のつもりで読む練習をすれば段々慣れてきます。

一番簡単なものをご紹介します。

001

例えばこの譜面はヘ音記号で書かれていますが、これをト音記号だと思って読めば当然音は変わってきます。同じ理屈でアルトやテノールやソプラノ記号だと思って読み直せば良い練習になります。

さらにト音でクラリネットのB管だと思って読んだり、F管のホルンだと思って読んだり、D管のトランペットと思って読んだりすればいいわけです(この楽器でこんな音出ないよ、というのは無視して練習します。)。

#や♭が付いていると逆さまにして活用するのに不具合が出ますが、変化記号がない譜面であれば前述の練習に加えて、逆さにして読む練習も出来ます。

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普通の譜面

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上下逆にした譜面

こうすれば一つの譜面で2回練習が可能ですし、移調譜面として読めばさらにバリエーションも増えます。

ほかにも色々な練習方法があるのでしょうが、個人的には実際の譜面に慣れ親しむのが一番だと思います。

 



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公式サイトのサンプルBGMの更新をしました。

公式サイトのサンプルBGMの更新をしました。

こちらからお聞き頂けます。

最近お仕事で作った曲をまとめて30曲くらいアップしましたが、

特に出来が良いのはページ内一番上の「お勧めサンプルBGM」にまとめてあります。

近いうちに過去のボカロ曲などもやり直してアップロード予定です。また作曲の本に続いてアレンジの本を書いていますので、こちらはまだまだ時間が掛かりそうですが、完成しましたらまたブログ内で告知致します。



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トゥルー・ピーク・リミッターとMP3エンコード考察

最近改訂させて頂いたDTMマスタリングのやり方にトゥルー・ピーク・リミッターのことを少し書いたのですが、ブログでもうちょっと考察してみたいと思います。

昨今はトゥルー・ピークに対応したリミッターは珍しくなくなりましたが、トゥルー・ピークとはデジタルデータのサンプル間を繋ぐ時に現れるデジタルデータの振幅よりも大きなピークのことです。

インターサンプルピークとも呼ばれますが、デジタルデータはいわずもがない方眼紙の目のようにアナログ音声をビットレートとサンプリングレートの数値に従って保存しています。ご存じの方も多いと思いますが、簡単におさらいしてみましょう。

 

02

波形を極限まで拡大

波形編集ソフトで波形を最大まで拡大すると上の画像のように1サンプル単位まで拡大することが出来ます(出来ないソフトもあります)。

例えばCD音質の44.1kHz/16bitなら一秒間に44,100回画像のようにポイントを取って保存していることになり、1秒間に何回サンプリング(標本化)するか?を決める単位をサンプリングレートと呼びます。

上の波形データは44.1kHzのものですので、横軸方向の点一つ一つが44,100分の1秒になり、この点が44,100個横に並ぶと一秒分のデータということになります。

次に音の大きさをどれだけ詳細に(何段階で)保存できるかはビットレートという単位で決まります。16bitなら2の16乗で65,536段階となります。上の画像では縦方向の細かさが見られませんが、16bitのデータなので縦軸には65,536段階の区切りがあることになります。

方眼紙の目の細かさと同じで細かいほど実際の音声を正確に保存することができ、数値が小さいと、イメージとしてはドット絵のようになって荒い低音質な音になっていきます。

ここまではデジタル音声の基礎知識で、ここからがトゥルー・ピークの話になります。

 

truepeak

この記事の最初の画像は点と点の間が繋がっていますが、あれはあくまでデジタルデータの点同士を疑似的に繋いでいるだけであって、実際のアナログ化された時の波形ではないはずです。

実際のデジタルデータは上の画像の左側の青い点のように保存されており、44.1kHz/16bitなら横軸の目盛り一つが44,100分の1秒であり、縦軸の目盛りは65,536段あるわけですが、我々がこのデジタルデータを音として聴くためにはスピーカーやヘッドホンからアナログの空気振動に変換する必要があります。

変換される際は右側の画像のように点と点を繋ぐわけですが、0dBを越えてクリップと書いてある部分のようにデジタルデータの青い点そのものは0dBを越えていなくても、実際に再生される際はには右側の緑の線のようになって再生されるのでクリップしてしまう場合があるわけです。

03

アナログデータはこのように波の状態になっています。

デジタルデータ上ではクリッピングしていないため、データをどれだけつぶさに見ても発見することは出来ず、アナログに変換されて初めて起こることですので、私もデジタルデータ上ではDAWのフェーダーにクリップランプが付かないのに、なぜかスピーカーで聴くと「ブチ」っと音割れしてしまった経験があります。

このようにアナログ変換された時に生じるピークをトゥルー・ピークというわけですが、このトゥルー・ピークをリミッッティングしてくれるのがトゥルー・ピーク・リミッターなわけです。

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Nugen Audio ISL 2 True Peak Limiter

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Flux:: Elixir

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Waves WLM Plus Loudness Meter

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Sonnox Oxford Oxford Limiter V2

Nugen Audio ISL 2 True Peak LimiterFlux:: ElixirWaves WLM Plus Loudness MeterSonnox Oxford Oxford Limiter V2などほかにもトゥルー・ピーク・リミッターが今はたくさんあり珍しくない状態です。

 

私が使っているのはOxford LimiterとElixirがメインでWAVESのWLM Plus Loudness Meterは一応トゥルー・ピーク・リミッターが付いていると言えば付いているのですが、このプラグインはあくまでメーターリングソフトでリミッターはおまけくらいに考えています。

この記事を書くに差し当ってElixirの最新版のインストールをしようとしたら、旧バージョンのアンインストールが上手くいかず、新しいバージョンも入れられず、使えなくなってしまったのでメーカーに問い合わせ中ですが、とりあえず残りのOxford LimiterとWLMでちょっと比較画像を作ってみました。

 

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オリジナルの矩形波

まずオリジナルの矩形波です。綺麗な直線を描いています。これにのOxford LimiterとWLMのトゥルー・ピーク・リミッターを使ってみます。

 

WLM Plus Loudness Meter

 

 

001

WLM Plus Loudness Meter 拡大

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WLM Plus Loudness Meter

WLMはかなり波形の形が変わって「かまぼこ」みたいな形になっています。実際の音楽の波形は言うまでもなくこんな単純ではありませんが、原音をどれだけ歪めてしまうのか?という参考にはなります。

音質的にはWLMは専用のリミッターではありませんので、最終的に使おうという気持ちにはなりません。あくまでメーターリングソフトの付加機能という感じであり、音の質感もあまり好きにはなれません。

オリジナルの矩形波に比べて波形(音)がかなり変わってしまっている点がポイントです。

Oxford Limiter V2

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Oxford Limiter V2 拡大

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Oxford Limiter V2 

 

Oxford LimiterとWLMを比べると明らかにOxford Limiterの方が波形(音)の変化が少ないのがわかります。多少「かまぼこ」っぽくなっていますが、WLMに比べると変化量が少ないのが見てわかります。音質的にはOxford Limiterが好みです。

0001 使用するかどうかは選択できます。

トゥルー・ピーク・リミッター機能が付いているのはOxford Limiterの「V2」からですが、使い方云々というよりは完全にプラグインの性能依存の問題なので色々試して自分が良いと思ったものを選ぶ感じになります。

トゥルー・ピーク問題はこれで一応の解決なのですが、そもそも極限まで音圧を稼ぐ事で発生する問題ですので、トゥルー・ピークが発生すること見越して、ほんの少しだけ(0.5dB程度)予め音量を下げておくという方法を個人的には取っています。

 

MP3などの圧縮フォーマット変換時の問題

MP3やOGGなどに変換する際の波形の乱れから音量が僅かに大きくなってしまう問題もトゥルー・ピーク・リミッターを使えばある程度までは押さえ込めるようです。

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オリジナルの矩形波(-2.5dB)

オリジナルの矩形波はピークが-2.5dBです。これを320kbpsと192kbpsのMP3フォーマットに変換してみます。

01

MP3 320kbps 少し崩れる

320kbpsでは多少波形が崩れてます。-2.5dBを少しだけオーバーしている(画像の右下が顕著)のがわかりますが、これくらいな大丈夫と思えます。

 

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MP3 128kbps かなり崩れる

128kbpsだとかなり波形は乱れ、0dBに届きそうなくらい音が大きくなってしまいます。

もし元々のマスタリング済みの波形が0dBまで大きくなっていた場合に、MP3にエンコードしたらどうなるかは説明するまでもないですが、トゥルー・ピーク・リミッターを使えば、bpsが低くてもそれなりに押さえ込めます。

どれだけ波形が乱れるかはエンコーダーの性能やフォーマットやbpsに依存するので、一切の例外なくどんな劣悪なbpsでも大丈夫かどうかは今のところ明言は出来ませんが、bpsが低いほど波形の乱れが大きくなり、私が実験する限りでは、トゥルー・ピークを0dBにした場合、無劣化のWAVEの状態では大丈夫ですが、128kbpsや96kbpsなどの低音質にエンコードするとピークメーターはクリップしなくてもトゥルー・ピークは0dBを越えてしまいます。

 

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トゥルー・ピークを0dBにして128kbpsのMP3にエンコードした場合

色々実験してみて確実に言えることは0dBまで音圧を上げる場合、トゥルー・ピークリミッターを入れたほうがMP3変換時のクリップを避けるには有益であるということです。

こういうことがあるので0dBまで挙げずに多少天井にスペースを作っておくことを私個人としては推奨したいです。

もちろんエンコーダーの性能もあるでしょうし、MP3よりもOGGの方が波形の乱れは少なく高音質です。bpsによる劣化具合も関係するので一概には言えませんし、トゥルー・ピークもDAコンバーターの性能に依存する部分があると思いますが、そもそもMP3化された後のことをどれだけ私たちが考える必要があるかも疑問だったりします。

作品の形態をMP3が最終形態なのか、CDが最終形態なのか、それとも動画の各種フォーマットやOGGが最終形態なのかはケースバイケースなので、私たちが作品を作るときに192kbpsのMP3に変換したときに音割れしないようにしようと考えて、作業する必要はあるのかどうかは難しい部分です。

聴いてくれる方がもっと低いbpsで変換されることがあるかもしれませんし、何処を下限と考えるかは人それぞれ違うと思います。

 

そもそも音楽のダイナミクス表現を潰して、極限まで音圧を稼ぐせいでこんな問題が発生するわけで、私個人としてはいわゆる音圧戦争的なものには反対であり、多少こういったことを考えつつも音が大きければ良いという風には考えずにトゥルー・ピークやMP3エンコードを常識的な範囲で見越して作業しています。

もちろん音が大きいほど良いという風に考える方もいらっしゃり、人それぞれですが、何処を上限にし、何処を下限にするかを考えるのはなかなか難しい問題です。

ちょっと天井を空けておくだけで問題の大部分は解決するので、個人的にはそのほうが良いのかなと、やはり思ったりもします。

最後までお読み頂き有り難う御座いました。

 



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DTMマスタリングのやり方の改訂が完了しました。

DTMマスタリングのやり方の改訂が終了しました。初版の執筆時とプラグインの発達などのDTM製作を取り巻く状況の変化や私自身の知識・技術・手法に照らし合わせて、大幅な改訂をさせて頂きました。

主に後半の具体的なマスタリングのやり方についての手法・視点の解説がメインです。

DLsiteにてユーザー登録でご購入下さった方はDLsiteにて再ダウンロード可能です。ゲストユーザーでご購入または、それ以外のご購入方法で販売元からダウンロード出来ない場合は「あとがき」の部分をコピーして頂いて「DTMマスタリングのやり方」の最後のメールアドレスに改訂版ご希望の旨をお伝え下さい。

ダウンロードリンクをこちらからお送りいたします。



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Chandler Limited Curve Bender Mastering EQ。

7~8年くらい前だと思うのですが、ABBEY ROADから出ていた「TG12413 Limiter」「EMI TG Mastering Pack」というプラグインがありました。

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TG12413 Limiter

 

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EMI TG12412

当時はまだWIN XPで、32bit環境で普通に使っていたのですが、64bit環境やAAXへ移行する時代になった時に大棚のABEEY ROADスタジオが経営難になって買収されたこともあり、事実上のディスコンとなってしまいました。日本ではMedia Integrationさんが代理店だったのですが、日本での取り扱いはなくなってしまいました。

TG12413 Limiter、TG Mastering Pack、RS124 Compressorについて今後のバージョンアップはありません。また、64bit、AAXへの対応もありません。
Media Integrationさん公式より

TG12413 Limiter、EMI TG Mastering Pack、RS124、も使っていたものの、そんなわけで結局は使えなくなってしまい残念に思っていたのですが、最近UADとapolloで使えるこの2つと同じABEEY ROAD系統のプラグインが新しく出たので、まずはイコライザーの方だけ購入してみました。コンプの方は迷っています(値段が高いので…)。

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Chandler Limited Zener Limiter

 

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Chandler Limited Curve Bender

Zener Limiterはまだ体験版を試しただけですが、どちらも復刻版として実機があります。プラグインとして旧ABEEY ROAD版と現UAD版を開発していたのはSoftubeらしいので昔使っていたABEEY ROAD時代のプラグインの代わりというわけではないですが、久しぶりにABEEY ROAD版のEMI TG12412の代わりとして活用しています(作りはちょっと違いますが…同じTG系ということで)。

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Zener Limiter実機

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Curve Bender実機

見た目もなんか強そうです。UAD-2のEQはオーバーサンプリング技術やモデリング技術の高さからAPIやNEVEを始めとして全然崩れないというか、アナログらしさを持ちつつも非常に綺麗にイコライジング出来ますが、Curve Benderも相当綺麗です。

Curve Benderは1コアに付き30.3%とややDSP負荷はやや高めで、実機の方はマスタリング用となっており、UAのサイトでもマスタリングのカテゴリーにありますが、ミックスでも使っています。

EQやコンプは実機の場合はノッチ式(周波数やゲインがステップするカチカチ)タイプじゃないとステレオで使うときにちょっと嫌なのですが、プラグインの場合はステレオでもLRのツマミがノッチ式でなくても困ることはありません。にも関わらずCurve Benderはノッチ式になっており、マスタリング用途であることを感じさせます。

主観的な表現で申し訳ないのですが、高級EQにあるようなブーストしてもあんまりブーストした感じがしないのに、ちゃんと綺麗に持ち上がっている、つまり全然音が崩れずに、綺麗なままであり、無茶しなけば加工後も最初からそういう音だったかのように感じさせる自然さがあるというマスタリング向きな感じです。

マスタリングでゴテゴテ弄るのは嫌いなのですが、BGMでたくさんご依頼を頂いたときにどうしても曲数が増えてくると各曲の印象がどうしても揃わない時など調整のためにCurve Benderを使うようになりました。

見た目も綺麗ですし、音も気に入っています。32bit時代の「EMI TG Mastering Pack」はこんな音じゃなかった気がしますが(7~8年前なのでよく覚えていません)、UAD-2の比較的新しいプラグインということもあり、今後も色々なところで出番がありそうです。

 

cb02

シェルビングで20kHzを3dBブースト

ハイをちょっと足そうとする時に、20kHzからシェルビングしても実際はグラフを見る限り2kHz辺りからシェルビングがスタートしています。聞いたままやればいいので別にグラフを見る必要もないと言えばないのですが、この手のアナログモデリングタイプはパラメーター数値と実際の変化の数値が違うということがよくあるので、一応は見ておくと参考にはなります。

cb03 ×1.5のスイッチ

ゲインは±5dBが基本でQはありませんので細かい作業は苦手です。5dbだとちょっと足りないときは△ ×1.5のスイッチを使うと3倍量のゲインが可能ですし、4バンドEQ+フィルターで計51箇所のEQポイントがありますので、Qがないこと以外はかなり汎用的と言えます。

 

 

cb04

フィルターはかなりヌルいです。

旧ABBEY ROAD時代のTG12414もそうでしたが、フィルターがかなりヌルく昨今のデジタルプラグインの-48dB/octや直角に切れるようなHPF、LPFが欲しいときには使えません。良くも悪くもマスタリング用で大味なイコライジングが出来る感じでしょうか。小回りの良さならデジタルEQには絶対に叶わないので、Curve Benderはミックスでは使いどころがマッチして、音が気に入れば出番があるという感じです。

cb05

アナログEQなので、ハーモニックディストーションもあります。

ほかのアナログEQがそうであるように、Curve Benderにもハーモニックディストーションがあります。通すだけで少し音が変わるのはアナログEQの宿命というか、売りというか、人にによって、ジャンルによって、トラックによって、目的によって、好みが分かれますが、音質の良さならハイレート処理の外部DSPに文句はないので、個人的には好きです。

マスタリングのEQは実機の高級機がベストではあると個人的には思うのですが、基本的にかなり高額ですし、そうそうみんながみんな持てるわけではありません。出来るだけ自分の好みやニーズにあったプラグインを見つけるというのが現実的な落としどころだと思うのですが、妥協点を少しでも高めるために、色々と試していく中で自分なりの方法を探していくのがみなさんがやってらっしゃることだと思います。

SSL、NEVE、APIなど色々ありますが、個人的にはTG系が結構好きなので今後も活用していきたいと思います。

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最近地味に買って良かったもの「Expressionペダル」

最近音楽製作で地味に買って良かったものがRolondのEV-5というExpressionペダルです。

ev-5 RolondのEV-5

MIDIキーボードにA-88を使っており、キーボードの左側にあるツマミを使えば好きなMIDI CCは入力出来るため、この手のフットコントローラーは要らないと長年思っていたのですが、使ってみると「両手が常に自由になるというのがかなり便利」と気づきました。

 

a88

A-88は左側にMIDI CCのツマミがあります。

A-88に限らずMIDI CCのツマミが左側にあると、88鍵盤のため体を少し左に捻らなければいけませんし、ツマミを触っている間は両手弾きが出来ません。

先に音符を打って、後でMIDI CC入力という方法がこれまでは多かったのですが(片手フレーズなら同時可能です)、ペダルでMIDI CCを入力するようになってからかなり楽になりました。

Expressionペダルとは言いますが、実際には好きなMIDI CCをアサイン出来るためかなり便利です。

 

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2つあれば同時に動かしたり、切り替えの手間を省けます。

A-88はExpressionペダルを挿す端子が2つあり、現在1つでやっていますが、2つあればいちいちMIDI CCを切り替えなくてもいいですし、シンセでMASSIVEなどのマクロを動かす時に2つ同時入力が可能になります。

A-88はMIDI CCのツマミが鍵盤に2つ付いていますので、やろうと思えば両手両足で同時に4つパラメーターを動かすことが出来ます。かなり便利なのでもう1つ買おうかとちょっと検討しています。

 

ability

「29~127」までしか入力出来ません。

しかし「なぜこんな仕様に?」と思える致命的な欠点(と私が感じる部分)もあります。それはペダルを最大まで元に戻した時に「0」の値を入力出来ず、私のEV-5では実際に入力出来るのは「29~127」までという点です(個体差はあるかもしれません)。

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VIENNAエンジンのMIDI CCのグラフ設定画面

VIENNAエンジンのように、MIDI CCの有効範囲グラフを自分で設定できるものは最低値の「29」を実際の「0」のようにすることが可能ですが、MASSIVEなどで使うときはこれが出来ないため、「0」まで動かしたいときには不向きになります。

 

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MASSIVEならマクロやMIDI LEARNで設定した値の約80%しか使えません。

パラメーターの最小値を使わないなら、最初から少し多めに可動範囲を設定しておけば設定した範囲内ではフル活用ですが、最小値を使いたい場合はシンセなどでのMIDIコントローラーとしては多少不便に感じることがあるかもしれません。

この点を最初は不良品か?とも思ったのですが、どうも仕様らしくこういうもののようです。Roland公式では伝統的なオルガンの仕様に則っているとのことですが、MIDI機器としてはオルガン以外での用途も多々あるわけですから、なんとかして欲しいところです。

多少残念なところもないわけではないのですが、ともあれ鍵盤でMIDIデータを入力する際に両手が自由になるというのは私にとってかなり便利で、満足しています。

 

実際の作業ではMIDI CCをリアルタイムで入力した後に、手作業で編集ということがほとんどですので、「0」に出来ないデメリットを飲み込んでも、両手で鍵盤を弾きながらリアルタイムでMIDI CCを色々同時に動かせるというメリットの方がずっと大きい感じでしょうか。

ExpressionペダルはキーボードがRolandならペダルもRoland製、YAMAHAでも同じく、同じメーカー同士で使うのが原則で、ほかにも接続機器によって色々使用上の制限があるようなので、購入検討の際はご注意下さい。そこまで高いものでもありませんので、もう1個買っても良いかも?と思っています。

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VIENNA MIR PROとオーケストラ音源のリバーブ考察

VIENNA SYMPHONIC LIBRARYが有名になり始めた当初、私にとっては8~9年くらい前ですが、当時(2008年くらい?)は今ほどリアルなオーケストラ音源のラインナップがなく、そんな中で「これはかなりリアルだ!」と入門用としてVIENNA SPECIAL EDITIONシリーズを買いました(当時は今ほどリアルなオケ音源はありませんでした)。

当時の内容のSPECIAL EDITIONは既に廃盤になって今はリニューアルされていますが、メーカー公式で聞くことの出来るデモ音源みたいのが自分でも作れると思っていたら、あんまりそうでもなく、打ち込みテクニックだけでなくリバーブをオーケストラに合う相当良いものを、しかも上手に使わないとメーカー公式のデモみたいにならないことがわかり、VIENNA音源で作るオーケストラに合うリバーブ探しの旅をしていました。

今でもオケ音源=リバーブ命という考えは変わっていませんが、色々と彷徨っている中、3年後(2011年)、同社からVIENNA SUITEというVIENNA社が作ったオーケストラホールを想定したコンボリューションリバーブがリリースされたので、今度はそれも購入しました。

これはかなり良く、VIENNA社の音源にVIENNA社のリバーブですから「相性」というと変ですが、ウィーンにあるコンツェルトハウスの大ホール、モーツァルトホール、シューベルトホールなどのコンボリューションのリバーブで使うVIENNA社の音源は当時としては満足の行くものでした。

しかし、それでもメーカー公式のデモとそっくりという音にはならず、やっぱり同時期にリリースされたVIENNA MIR PROを買わないと駄目なのかなぁ~と思っていました。

しかし仕事で使うのが目的であって、メーカーデモ音源そっくりにする必要はなかったので、 MIR PROとは疎遠でずっと長いこと放置してきました。なんだかいまいちよく分からないソフトの割りに高額でもありましたし、ほかのメーカーのオケ音源も強くなってきたのでそちらにも目移りしていました。

VIENNA製品はかなり活用させてもらいましたが、半年くらい前に購入したVIENNA MIR PRO(ミアプロと読みます)で、これはすごい便利ソフトだということに気づき、MIR PROも加わってやっとメーカーでもと同じような音が出るようになりました(音だけです、曲がではありません)。

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VIENNA MIR PRO

レッスンで生徒さんにオケ音源のご相談を頂くこともありますが、VIENNAシリーズの製品そのものはお勧め出来ます。しかしSPECIAL EDITIONだけを買ってもメーカーデモ曲のようにはなりません。MIR PROを使わないとなかなか難しいです。

多分ですが、私がそうであったようにオケ音源を検討していてVIENNA社のデモ曲を聴き、「VIENNAの音源は凄いリアルだ、これを買えばこんな感じの曲が作れるんだ!」と期待して、詰め合わせお買い得パックであるSPECIAL EDITIONを買う方は多いのではないかと思うのですが、実際に使ってみると「なんか公式のデモ音源みたいにならない…」なんてことも多いです。

メーカーは広告塔たるデモ音源製作に当然自社製品をフル活用しているわけで、MIR PROも多いに活用されているはずです。VIENNA SUITEはリバーブやコンプやEQなどの詰め合わせなので代替が効くという意味でなくても構わないかもしれませんが、VIENNA 音源の性能をフルに発揮するにはMIR PROと組み合わせて使わないとフルパワーは発揮出来ないのだと実際に使ってみて思いました。

また突き詰めると寄せ集めののSPECIAL EDITIONではなく、単体パックも買わないと駄目だと使っている内に限界が見えてきたので、ソロストリングスやチャンバーストリングスは単体バージョンを買って使っていましたが、最後にMIR PROを買ったので、これはもっと早く買えば良かったと思います。

VIENNA音源をお使いで、いまいちメーカーデモ曲みたいにならないという方はMIR PROの体験版を使ってみると、「なるほどね」と納得出来る部分があるかもしれません。私も昔は普通にVIENNA SUITEのリバーブで十分だと思っていたのですが、通常のコンボリューションではなく、仮想空間をシミュレートしたMulti Impulse Response ConvolutionでこそVIENNA音源はフル活用出来ますし、それ以外の曲でもMIR PROは活用出来るので普通のリバーブの進歩系として持っていても損はありません。

私が使っているのは24トラック制限の安い機能制限版のMIR24ですが、これで十分です。それ以上なら普通に通常のリバーブで対応すれば十分事足ります。

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UAD-2のOcean Way Studios

MIR PROと似たようなことが出来るのが、UAD-2のOcean Way Studiosですが、こちらは全トラック個別にパンニングやステレオイメージングをコントロール出来るわけではなく、オケ用という感じではありません。

Ocean Way StudiosはBGM系では大活躍ですが、文字通りスタジオの響きであってフルオーケストラを演奏する大ホールでの響きではないため、用途も音も違います。

 

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ステージ上に自由に各楽器を配置し、そのパンニング・距離感・ステレオイメージングをすべてコンボリューションで行うという現時点では私の知る限り類似製品のない珍しいプラグインです。分類としてはリバーブなのでしょうが、仮想空間での二次元的な配置やマイキングをしつつ音を作っていけるので普通のセンドで使うリバーブとはかなり毛色が異なります。

言うなれば「もの凄いたくさんのポイントでインパルス・レスポンスデータを用意したコンボリューションリバーブ」と「ステレオイメージャー」と「パンニング」が一体になった楽器の発音位置を指定できるプラグインです。普通のコンボリューションリバーブだと何処か特定の一カ所固定でマイキングしたものになりますが、MIR PROはマイクとの距離や発音の位置をステージやスタジオの内部であれば何処で好きに設定出来ます。

 

最近は「擬似的に」リバーブを付けるよりも、spitfire audioのように最初からホールで綺麗に残響が付いたまま録音されたものの方が良いという方にシフトして行きましたので、MIR PROに頼り切りではないですが、これはこれで面白いというか、オケ以外での用途で活躍することもあります。

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オケで使うよりも普通のBGMでアコーディオンやアコースティックギターやピアノ音源に使うことで、実際にマイクを使ってそのスタジオで録音したかのような質感が出るので、むしろこちらの方がMIR PROのメインの用途になってしまっています。

 

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もの凄い綺麗にショートリバーブが掛かるというか、マイキングの具合の調整でかなり良い感じになってきます。打ち込みっぽさがかなり消え失せていくので、ケースバイケースですが選択肢として買って良かったプラグインです。「実際にマイクを立てて録音した」というリアルな音になるのが、BGMだと絶対に良いというわけではありませんが、薄く使ってみたりして活用しています。

こうなってくるとOcean Way Studiosと用途が似てきますが、設定出来るパラメーターやそもそもの目的が異なりますので、出音も違い、どっちが良いのか悩むことも多々あります。リアルさならMIR PROかと思いますが、BGMなどオケ以外で使う場合にはリアルなのが必ずしも良いというわけでもないので、悩ましいところです。

 

MIR PROを使うには「MIR PRO本体」だけではなく、追加で「ルームパック」を買う必要があり、リバーブ本体とインパルス・レスポンスが別売りになっている形態になっています。

現状ではコンサートホールのパックが2つ、教会のパックが2つ、レコーディングスタジオが1つで、例えば『ROOMPACK 1 VIENNA KONZERTHAUS』を買うと、コンツェルトハウスの大ホール、モーツァルトホール、シューベルトホール、新ホール、ロビーの5つがバンドルされています。

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『ROOMPACK 1 VIENNA KONZERTHAUS』のGrosserSaal(大ホール)です。

オケ曲や室内楽を作るときはもちろん活用出来ますし、それ以外のBGMやポップス的な曲でもOcean Way Studiosと並んでセンドで使うタイプの普通のリバーブとはちょっと異なる方式のリバーブとしてマルチに活用出来ます。

思うにサンプリングタイプのオーケストラ音源は、製作にも多大な費用が掛かるので、大手メーカーが製作するのがメインになると思うのですが(物理モデリングは別)、ヴァイオリンやトランペットなどの楽器そのものの値段・音の良さや演奏者の腕はそこまで大きく変わらないと思います。

例えばVIENNAが雇ったヴァイオリン奏者はストラディヴァリウス、ガルネリ、アマティとまではいかなくても、数千万円の楽器や高価な録音機材や一流のエンジニアを使っているけれど、EASTWESTが雇ったヴァイオリン奏者や録音機材やエンジニアにケチって三流の楽器、演奏者、録音環境という風には思えません。

どちらも最高レベルのものを使っていると思うのですが、出てくる音は全然違います。もちろんサンプルの数、サンプル同士を繋ぐ技術、Velocity Xfadeなどの特殊技術など、それ以外の技術も多いにあると思いますが、音色の核となる楽器や奏者のレベルはそれほど変わらないはずです。

では、なぜメーカーごとに全然音が違うのか?というと、価格帯が全然違うものはサンプル数や技術レベルが異なるので単純比較できませんが、残響をどう考えているかだと思います。

完全に後付けのVIENNAやIRCAM Solo Instrumentsはどうしても擬似的に付けるので不自然さを完璧に免れることは出来ません。しかし残響を自分で好きに付け足せるというのは製作においてはかなり自由度が高くなります。

オーケストラサウンドは楽器個別の音以外に、そのオケが演奏されているホールの響きもセットで一つの音色と我々は感じるので、元音がドライな音源に対してはどれだけ良いリバーブプラグインが用意出来るか?がオケ音源における重要項目になってきます(制作時のサンプリングの質も大切ですが)。

オーケストラにおいてはロックやポップスのセンドで使ういわゆる一般的な意味でのリバーブでなく、もっと高いレベルでのリバーブ技術が必要になると思うのですが、リアルさを追求したいなら、2016年の現在においては、MIR PROのようなホールのすべての位置でインパルス・レスポンスを収録するような大容量マルチコンボリューションか、spitfireやEASTWESTのように最初から残響ありで収録されているものの2つが選択肢になるのではないかと思います。

未来においてはもっと進んだ技術が生まれるのでしょうが、オケ音源を購入検討なさる方は同時に残響をどうするのか?も一緒に考えることが、より良い音を得るポイントなります。

MIR PROは価格が比較的高額であり、あまり世の中に用途が理解されていない感じですが、とても面白いプラグインなのでご紹介させて頂きました。

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